ロータス・KVレーシング・テクノロジーのダラーラ・ホンダに乗る佐藤琢磨は、テキサス・モーター・スピードウェイで開催された第7戦でサスペンション・トラブルによりクラッシュに追い込まれ、好発進を見せたレースを残念な形で終えることとなった。

　今回は4戦連続開催となるオーバルレースの第3戦にあたる。フォートワース近郊のテキサス・モーター・スピードウェイはシリーズ中もっともバンク角の深いオーバルコース。当然のごとく、ラップスピードはとてつもなく速い。
「とにかく面白いところですよ」と琢磨。「カンザスとよく似ているんですが、バンプが多いし、バンク角の深さは驚くほどです！ 予選前のプラクティスは1時間だけで、したがってできることは限られていましたが、僕はまずこの深いバンクに慣れようとしました。インディアナポリスの次のレースだったので、とても奇妙に感じられたし、とにかくとんでもないところでした」
「僕たちはレースセットアップに専念しましたが、温度が非常に高く、このためグリップレベルはとても低い状態でした。コースを見た印象では2ワイドも簡単にできると思っていましたが、グリップが不足していたために、それはとても難しいものとなっていました」

　琢磨は予選で11位と健闘する。「予選の結果には満足していまし、感触も悪くありませんでした。予選後には、土曜日の夜に行なわれるナイトレースを見据えたシミュレーション用のイブニング・セッションが設けられていました。けれども、これが午後7時頃の実施だったため、まだずいぶん温かく感じられたのです。このとき、バンクの半分ほどは日がかげっていましたが、これが車の挙動に大きな影響を与えていました。オーバルでは何もかも温度の影響を強く受けるので、ナイトレースがどのようになるか、予想できませんでした。でも、とにかくそこでレースをするわけですから、僕はとても楽しみにしていたのです」

　レースでは順調にスタートを切り、集団のなかで果敢にバトルを演じた。「スタートは慎重にいきましたが、さすがに、最初のオーバルレースとなったカンザスほどはスピードを落としません。悪くないポジションで集団を追いかけ、とてもエキサイティングな思いをしました。2ワイドや3ワイド、時には4ワイドなんてこともありました！ 本当にとんでもない状況で、しかもバンプがいたるところにあったので、どのドライバーも派手に火花を撒き散らしていました」

　「順位が落ち着いてきたところでいろいろな調整を行ないましたが、最初の15周についてはとても満足していました。最初の数周では順位を落としましたが、その後、ポジションを取り戻すことに成功します。けれども、間もなく車はひどいアンダーステアとなり、そのバランスの変化に苦しむこととなります。コクピット内ではロールバーやウェイトジャッカーを操作して荷重のかかり方を調整することもできますが、それにしてもアンダーステアがひどすぎました。20ラップを過ぎるとペースは大きく落ち、コーナーはほとんどスロットルを抜いたまま走るような状態となってしまいます。できればピットストップしたいところでしたが、リードラップに留まっていなければならなかったので、そのまま走り続けました」

　ついにフルコーションとなり、琢磨は最初のピットストップを行なった。「新たに履いたタイアは空気圧の設定を変更し、フロントウィングもより立てました。これでバランスは大きく改善されて、インサイドからもアウトサイドからもオーバーテイクできるようになり、最高の気分を味わいました。けれども、ターン2で思わぬことが起きます。車高が落ちて、そのまま変な方向に向かって進み始めたのです。リアサスペンションの何かが壊れたことはすぐわかりましたが、ウォールにクラッシュするまで、まるで助手席に腰掛けたパッセンジャーのように何もできないという状況は、本当にいやなものですね」

　幸いにも、琢磨に怪我はなかった。次戦は6月20日にアイオワ・スピードウェイのオーバルコースで開催されるが、その前に、琢磨は今週、ワトキンスグレンのロードコースでテストを行なう予定だ。

　「身体は大丈夫ですよ」と琢磨。「ただ、残念でしたね。車のフィーリングはよかったし、面白いレースになると思っていましたから。アイオワはグリップが低いうえにバンピーなので、ロードコース用のウィングを使うことになりそうです。でも、その前にワトキンスグレンのロードコースで“右に曲がる”ことを楽しみにしています！」

written by Marcus Simmons

2010年6月5日、テキサス州フォートワース発／2010年IZODインディカー・シリーズ
第7戦。テキサスのデビュー戦を予選11位という好成績で飾ったルーキーの佐藤琢磨
は、決勝中、No.5をつけたロータス・KVレーシング・テクノロジー／ホンダ／ダラー
ラ／ファイアストーンの不安定な挙動に悩まされていたが、57ラップ目にリアサスペ
ンションのパーツが破損してターン2のウォールと接触。自力でコクピットから立ち
上がった琢磨は、その後のレースをロータス・チームのピットエリアから見守った。
　次戦アイオワ・コーン・インディ250は、6月20日（日）にアイオワ・スピードウェ
イにて開催される。

佐藤琢磨のコメント
「スタートはとてもエキサイティングでした。素晴らしいトラックで、特にサイド・
バイ・サイド・レーシングには最高です。けれども、すぐに僕はバランスに問題を抱
えるようになり、コーナーはスロットルを抜いて通過しなければいけませんでした。
最初のピットストップまでは、とりあえずそのまま我慢することになります。チーム
のスタッフは素晴らしい仕事をしてくれて、最初のピットストップでバランスを調整
してくれました。その後はペースを保って何人かをオーバーテイクしました。ところ
が、ターン2に進入しようとしたとき、何かが突然壊れ、そのままウォールに接触し
てしまいました。衝突の衝撃はそれほど大きくはありませんでした。このような形で
レースを終えることは、とても残念でした」

（KVレーシング・テクノロジーのプレスリリースより）

ファンの皆さまへ
いつも佐藤琢磨を応援してくださり、誠にありがとうございます。
先ほどチーム側の手違いにより、一時的に第4戦ロングビーチ決勝後のコメントが掲
載されました。上記のコメントが本来のものです。お詫びして訂正いたします。
今後とも佐藤琢磨をよろしくお願い申し上げます。
TSエンタープライズ

2010年6月4日、テキサス州フォートワース発／2010年IZODインディカー・シリーズ第7戦。金曜日の午後にテキサス・モーター・スピードウェイで行なわれたファイアストーン550Kの予選では、テキサスの暑さに多くのドライバーが苦しむこととなった。けれども、気温35℃、路面温度は57℃を超えるなか、KVレーシング・テクノロジーの佐藤琢磨は力強いパフォーマンスを示したのである。
　IZODインディカー・シリーズのルーキーで、No.5のロータス・KVレーシング・テクノロジー／ホンダ／ダラーラ／ファイアストーンを駆る琢磨は、まだオーバルトラックのイベントはこれが3戦目であるにもかかわらず、金曜日の予選では4周の平均で213.692mphを記録、11番手につけた。カンザズとインディアナポリスではいずれも一時6位まで上り詰めながら、満足のいく結果を残せなかった琢磨。来る土曜日の夜、フォートワースの北側にあたる1.5マイルのトライオーバルにおいて228ラップで競われる決勝では、彼が幸運に恵まれることを祈りたい。

佐藤琢磨のコメント
「プラクティスの時間が限られていたことを思えば、ロータスのマシーンは着実な進歩を遂げたといえます。シリーズ中、最大のバンク角を有するこのトラックはとても印象深いものです。いい意味でクレイジーだといえるでしょう。僕たちはストレートに予選に挑み、午後に残した結果には満足を覚えています（テキサス初出場で予選11位）。今晩行なわれるナイトプラクティスがどうなるか、様子を見てみることにします。明日に向けては強力なマシーンに仕上がっていると思います」

（KVレーシング・テクノロジーのプレスリリースより）