デトロイトのベルアイで開催されたNTTインディカー・シリーズ第7戦で、デイル・コイン・レーシング・ウィズRWRチームのNo.51 ダラーラ・ホンダに乗る佐藤琢磨は予選でフロントロウを勝ち取り、決勝に向けて大きな期待を抱く。ところが、日曜日になってもドライバーとマシーンは速かったにもかかわらず、ファイアストン・ソフト・タイヤのデグラデーションがあまりに激しく、好成績を収めるにはほど遠い状況に追い込まれてしまう。さらには早めにピットストップをおこなったために3ストップ作戦を余儀なくされ、くわえて集団をコンパクトにまとめるイエロー・コーションもなかったので、琢磨は13位でフィニッシュするのが精一杯という結果に終わった。

「土曜日までは、素晴らしいチームの奮闘もあって、とてもいい雰囲気でした」と琢磨。「入念に準備したおかげもあって、マシーンは予選でも非常に好調でした。また、プラクティス1とプラクティス2でも微調整をした程度で、あとはいろいろなものを適合させていきました。昨年のデイル・コイン・レーシングは、予選で優れた戦闘力を発揮し、なかでもデトロイトでは特に好調でしたが、まだまだやるべき仕事がたくさん残っていることもわかっていました。しかも、今年はどのサーキットでもファイアストン・タイヤの特性が変わっているように感じられましたが、僕たちはいい仕事をしたと思っていました。予選は、この週末のハイライトで、したがって決勝も楽しみにしていました！」

　金曜日に行なわれた最初のプラクティスで11番手となった琢磨は、土曜日の午前中のセッションでも同じ11番手となる。「僕たちのスピードにはポテンシャルが感じられましたが、それはどのチームにとっても同じこと。とにかく、各チームの戦闘力はとても接近しているのです！ ある時点ではQ3に進出できるかもしれないと思っていましたが、どうなるかはわかりません。でも、これまでの努力が実を結びつつあるように思えていました」

　琢磨とチームメイトのデイヴィド・マルカスが操るDCRのマシーンは予選で好調だった。第1セグメントを6番手で通過した琢磨は、第2セグメントで5番手へと躍進し、ファイアストン・ファスト6へのチケットを手に入れる。ここで琢磨はセッション終了間際までトップの座に立っていたが、最後の最後にジョセフ・ニューガーデンに破れ、2番手となった。

「Q1とQ2ではマシーンをチューニングし、バランスを整えていきました。いつもどおりの接戦なので、ミスはまったく許されません。セッションを通じて、僕はどんどんプッシュしていき、最後の走行ではかなりいい状態にまとめられました。予選のフォーマットは、デトロイトのいつものスタイルとは異なっていました。通常、ここではダブルヘッダー・レースが行なわれるので、ドライバーは予選で奇数グループと偶数グループに分けられ、1度だけアタックできます。AJフォイトとアンドレッティでポールポジションを獲得したときは、この1回限りの予選フォーマットでした。けれども、今回は1レースだけの開催なので、Q2で使ったレッド・タイヤを再び使わなければいけないことになります。これがどうなるのか、僕たちには読み切れませんでしたが、こういうとき、ペンスキーはいつもうまく状況に適応します。僕がとりわけ驚いたのは、新品のレッド・タイヤを履いたときと同じタイムをジョセフが記録したことにあります。多くのドライバーはパフォーマンスの低下に見舞われていましたが、僕たちはこれをうまく乗りきることができました」

「僕はとても嬉しく思っていました。フロントロウを獲得するなんて、本当に久しぶりだったからです！ しかも、僕たちはいつも予選よりも決勝のほうがパフォーマンスは上がるので、レースに向けても自信を抱いていました。デトロイトはタイヤに厳しく、とりわけソフト・タイヤにはハードなコースなので、これまでのレースでも、多くのドライバーができるだけ早くピットストップしてプライマリー・タイヤに履き替えてきました。昨年、僕は第1レースで16ラップまで走り、多くのドライバーをオーバーテイクしましたが、第2レースでは多くのドライバーが20ラップまで走り続けました。セントピーターズバーグでは、ほとんどのドライバーがデグラデーションに苦しむなか、レッド・タイヤを履いているときの僕はもっとも力強いペースで走るドライバーにひとりだったので、最初のスティントを引き伸ばし、お馴染みの2ストップ作戦でレースを走りきるつもりでした」

　けれども、日曜日のコンディションがガラリと変わってしまう。ウォームアップで、No.51はなんと13番手へと後退したのである。「気温がざっと20℉（約11℃）ほども下がりました。どんより曇った空模様がレースの間は続きそうで、僕たちはあまりコンペティティブではありませんでした。マシーンの感触がいいともいえませんでした。バランスがよくないうえにグリップも不足していて、土曜日のウォームアップでは多くのドライバーが苦しんでいました」

　スタート直後にはメイヤー・シャンク・レーシングのサイモン・パジェノーとエリオ・カストロネヴェスにオーバーテイクされて4番手となったものの、それほど悪い状況ではなかった。「期待していたのとは、だいぶ違うスタートになりました！ 僕のスタートはまずまずよかったのですが、インディ500の優勝経験を持つふたりのドライバーが2列目から素晴らしいスタートを切ったのです。サイモンとエリオは僕の直後につけていて、僕とジョセフは風をまともに受けていました。おかげで、彼らはターン1に向けてスリップストリームを使えたのです。僕はジョセフとサイド・バイ・サイドになっていたので、イン側にいけず、優位を囲まれてしまい、なにもできなくなります。ターン1でサイモンはすでに僕のイン側にいて、僕はスロットルを戻さなければならなくなりました。僕はかろうじて、エリオのアウト側に留まっていましたが、おかげでターン2の出口では勢いを失い、彼は僕たちみんなからトウを手に入れたのです。いずれにしても、誰もが数周のうちにタイヤのデグラデーションに見舞われ、僕が優位に立つと思っていたのですが、現実は正反対になりました」

　事実、No.51が履いていたレッド・タイヤはあっという間にグリップが低下。琢磨はカストロネヴェスを抜き返そうとしたが、状況は次第に悪化する。琢磨はパト・オワード、ウィル・パワー、スコット・ディクソン（中団グリッドからスタートしたパワーとディクソンはブラック・タイヤを履いていた）らに抜かされ、9ラップにピットに入るときにはタイヤがひどくスライドしている状況だった。「デグラデーションは3ラップ目に始まりました。4周目にはエリオに追いついて、追い越すいいチャンスが巡ってきたと思いましたが、5ラップ目の始めにはリア・タイヤが終わってしまいます。これにはショックを受けました。ここまで激しいドロップオフは経験したことがなかったからです。僕はヘアピンでイン側にいるエリオを見ていましたが、出口ではまるでトラクションが得られず、マシーンがスライドし始め、ここで万事休すになりました。そして次の周にはラップタイムが3秒落ちました。レッド・タイヤでもう少し走り続けたかったのですが、僕はどんどん順位を落としていきます。ここで決断を下さなければならなくなり、ピットに飛び込んでタイヤを交換しました」

　琢磨は、次のスティントの間に徐々に7番手まで挽回すると、ふたたびピットストップを行なった。ところが、このピットストップが完璧とはいいがたいものになる。15番手でコースに復帰した琢磨は、ほかのドライバーがピットストップを行なうと7番手までポジションを上げたが、最後のピットストップを終えると14番手に後退。このときフィニッシュまであと20ラップとなっていたが、ここで琢磨は、ほとんどの周回数をほぼトップのタイムで走行したものの、集団からは大きく引き離されていた。このため、ファイナルラップでライナス・ヴィーケイがクラッシュして13番手に繰り上がったところで、チェッカードフラッグを受けたのである。

「2回目のピットストップではある問題のため順位を落としました。3回目のピットストップでも、別の問題が起こりました。ウィル・パワーは素晴らしい走りで勝利を掴み取りました。ブラック・タイヤでスタートした彼は、最後のスティントでレッド・タイヤを履きましたが、このときは路面にラバーが載っていたため、タイヤの性能もずいぶんよくなっていたようです。結果的に、僕たちにとっては残念な結果となりましたが、これがレースというもので、文句をつけるわけにはいきません。プライム・タイヤを履いているときの僕のペースはとても速かったものの、久しぶりにイエローが出ないレースとなり、挽回のチャンスは手に入りませんでした」

　スケジュールが立て込んだNTTインディーカー・シリーズ、その次戦は、ローラーコースターのようにアップダウンが激しいウィスコンシン州郊外のクラシックコースであるロードアメリカを訪れる。「3週連続で、心が折れるようなレースとなりました。まずはインディ500の予選、続いてその決勝、そして今回のデトロイトです。いっぽうで、僕たちは純粋なスピードという部分で素晴らしい結果を残すことができたので、この面ではとても満足しています。ロードアメリカはファンもドライバーも大好きで、おそらく世界でもっともペースが速いサーキットのひとつでしょう。素晴らしい歴史があって、とても速く、ローダウンフォースの高速バトルが繰り広げられます。ものすごく楽しみですし、いい結果を残せると期待しています。僕たちには、好成績が本当に必要なのです！」

written by Marcus Simmons

2022年6月5日、ミシガン州デトロイト発。

本日、デトロイトGPの決勝レースが行われ、デイル・コイン・レーシング・ウィズRWRのNo.51 Nurtec ODT ホンダを駆る佐藤琢磨は13位でフィニッシュしました。

昨日の予選で2番グリッドを獲得した琢磨は、スタートで4番手に後退。その後、9周目にビットストップしてオルタナティブ･タイヤからプライマリー･タイヤに交換するまで、このポジションを守りました。

ピットストップで23番手まで順位を落とした琢磨は、33周目に2度目のピットストップを行ったときには7番手まで挽回。ピットでの作業を終えると、15番手でコースに復帰し、50周目に最後のピットストップを行うまでには、再び7番手まで順位を上げていました。さらにレース終盤には何度かファステストラップをマークしましたが、2ストップ作戦で戦っていたドライバーがいたこともあって、最終的に13位となりました。

次戦は6月12日にロードアメリカで開催されます。

佐藤琢磨のコメント
「今日のデトロイトでのレースは苦しい戦いとなりました。予選でフロントロウを手に入れたのはもちろん嬉しかったのですが、僕たちは決勝レースでいい結果を残したいと望んでいました。ところが、レッドタイヤをうまく使いこなすことができず、ここで順位を落としたことが大きく響きました。このとき、プライマリー･タイヤを履いていたドライバーたちに遅れをとってしまったのです。正直、これはまったく予期しないことでした。この結果、僕たちは3ストップ作戦にしなければならず、これが大きく影響したのです。今週末、チームは全般的に素晴らしい働きをしてくれました。僕たちは目の覚めるようなスピードを示すことができたので、できれば、この勢いを次戦のロードアメリカに持ち越したいと思っています」

（デイル・コイン・レーシング・ウィズRWRのプレスリリースより）

2022年6月4日、ミシガン州デトロイト発。

本日、デトロイトGPの予選初日が行なわれ、デイル・コイン・レーシング・ウィズRWRのNo.51 Nurtec ODT ホンダを駆る佐藤琢磨は、ファイアストン・ファスト6で2番手のタイムを叩き出し、今季のベストグリッドとなるフロントロウを勝ち取りました。

予選のセグメント1を6番手で通過した琢磨は、ファスト12で5番手タイムをマーク。6分間にわたって行なわれたファスト6では、終了間際まで琢磨が暫定のトップに立っていましたが、最終的にジョセフ・ニューガーデンが0.1337秒上回るタイムを記録し、琢磨の予選2位が確定しました。

琢磨が今季、これまでに記録した予選の最高位はテキサスでの3位。デトロイトでは2014年と2017年の2回、ポールポジションを獲得しています。

佐藤琢磨のコメント
「デイル・コイン・レーシングのことを心から誇りに思います。最初の2ラウンドでは、チームメイトのデイヴィッド（マルカス）が先行して僕は追い立てられる格好になりましたが、ファイアストン・ファスト6では最終的にとてもいいラップタイムを記録できました。これには本当に満足しました！ これまではNurtec ODT ホンダのポテンシャルをフルに引き出せなかっただけで、僕たちにスピードがあることは以前からわかっていました。僕たちはインディで手に入れた勢いを保ち、とてもポジティブな状態でこの週末を迎えました。これは本当の意味でチームの勝利であり、誰もが心から喜んでいます」

（デイル・コイン・レーシング・ウィズRWRのプレスリリースより）