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2015年は12月12日に、いつもの代々木・山野ホールさんで開催された琢磨クラブ・ミーティング(TCM)。その直前、都内某所で行われた打ち合わせでは、佐藤琢磨君がこんな提案していました。
「じゃあ、それもプレゼントしましょうよ」
「え? 3名じゃなきゃいけないの? 時間が許す限り、たくさんの人にしましょうよ」
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毎年、TCMの運営に関わるスタッフはハラハラドキドキ。だって、サービス精神旺盛な琢磨君が「あれもプレゼントしよう」「これも差し上げよう」って言い出すので、それをどうやったら実現できるかで頭を悩ませることになるからです。結局、この席でインディカー参戦100戦を記念した特大写真パネルをプレゼントすることが急遽、決定。「でも、あんなに大きなもの、持って帰れる?(スタッフ1)」「じゃあ、送料負担で送って差し上げよう(琢磨君)」「でも、運送屋さん、扱ってくれるかな?(スタッフ2)」「サインは入れる? 入れない?(スタッフ1)」「そりゃあ、入れるでしょ(琢磨君)」「え、でも、写真だからマジックだとインクが弾かれちゃうよ(スタッフ3)」「じゃあ、一度そこだけ艶消し処理して……(スタッフ4)」 なんて議論が延々繰り広げられるんです。
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それもこれも、TCMに足を運んでくださる皆さんに、琢磨君が少しでも楽しんでいただきたいと願えばこそ。だから、今年もいつものように参加者全員と握手会しましたし、直筆サインカードも皆さんに差し上げましたよ。でも、毎年同じことばかりじゃいけないよね、ということで、ジャンケン大会のプレゼントはステージ上に展示されたショーカーに乗り込んだところを琢磨君とツーショットで撮影して差し上げるとか、イベントの最後では琢磨君が客席に向かって特製キャップを投げ込むとか、これまでになかった試みもいくつか実現しました。
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さらには、毎年恒例のビデオを使ったシーズンの振り返りコーナーでも「琢磨語録」という新コーナーを設け、琢磨君が語った2015年に向けた抱負を改めて確認してみたりと、スタッフ全員が毎年よりよいイベントになるように工夫しているんです。だからこそ、13年の長きにわたってレーシングドライバーのファンクラブイベントがこうして綿々と開催されてきたんでしょうね。あ、もちろん、それを楽しみにして毎年訪れてくださる皆さんがいればこそのTCM。いわば、相思相愛の形でいままで続いてきたのが、このTCMなんですね。
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あれ、今年もまた自己紹介が遅れました。TCMのゲストとしてお手伝いさせていただいている自動車ライターの大谷達也です。今回も夢と感動とドタバタ(?)に溢れたTCMの模様をしっかりとリポートしちゃうので、どうか最後までお付き合いください。
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今年のTCMの見どころは、まずなんといってもステージ上にインディマシーンのショーカーが展示されたこと。これ、ファイアストン・ブランドでインディカーにタイアを供給しているブリヂストンさんの協力で実現したもの。今年もMCを担当してくれたカオリンこと川崎かおりさんも言っていたけれど、これがあるだけでステージがぐんと引き締まりますよね。
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さて、イベントはそのカオリンの登場で幕開け。続いて彼女の紹介で琢磨君が呼び込まれます。「こんにちは! みなさん。今シーズンもたくさんの応援、ありがとうございました」 琢磨君のそんな第一声に観客席のボルテージは最高潮に達します。続いてカオリンの「本当にお疲れさまでした。琢磨さん、今年はインディカーに参戦して100年で……」というコメントで場内は大爆笑。
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「いやいや、100年はやってないけれど、それでも厳しいシーズンでした」 そう琢磨君が振り返り始めると、客席はシーンとしてきました。「でも、自分なりにいくつか納得できたところもあったし、こうしておけばもっとよかったのになあと思うところもたくさんあったので、もう1度インディカー・シリーズで頑張りたいと思います」 おーっと、早くもTCM恒例の“先走りコメント”登場か?と思われたのですが、ここでは深入りせず、「今年はエアロパッケージがオープンになって、おかげでちょっとした接触でもすぐにマシーンが壊れるようになって……」とシーズンの解説を始めてくれました。
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そんな話題がひと段落したところで私が呼び込まれ、いよいよビデオを使って1シーズンを1時間で振り返るコーナーがスタート。もっとも、ビデオを流しっぱなしと言うわけではなく、たとえばインディ500のスタートシーンでは「あ、ちょっとここでストップ!」と琢磨君が指示。ライアン・ハンター-レイ、セイジ・カラム、琢磨君の3人が3ワイドになっているシーンの静止画像を見ながら、「ほら、ハンター-レイは自分のアウト側にカラムと僕がいることがわかっているから、ノーズを真っ直ぐ前に向けている。ところが、カラムのノーズはアウト向きでしょ?」と細かく解説。「で、この2コマ後くらいには、『この人、ヤバイ』って気がついてスロットルを戻したけれど、このときには320km/hくらい出ちゃっているから、もう止まらないんですよ」と、解説のほうもまるで止まらない様子でした。
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こんな調子でシーズンのほぼ全戦を振り返った後で、シボレーとホンダのエアロキットを開発したエンジニアに言及。「シボレーはあの人で、ホンダはこっちの人」みたいな説明にはものすごく説得力があって、だから琢磨君たちは苦戦したんだということがよく理解できました。
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続いては質問コーナー。今年も琢磨君に向けて8つの質問が飛び出しましたが、そのなかには「琢磨さんは日本のスーパーフォーミュラには参戦しないんですか?」とか「世界を旅してきた琢磨さんにとって忘れられない光景があったら教えてください」とか「ホンダ・レーシング・サンクス・デイでフェルナンド・アロンソ選手と自撮りしていましたが、どんな話をしたんですか?」とか、もう興味深い質問が続出。そのひとつひとつに、琢磨君は丁寧に答えていきました。最後に質問に立った女性は「モータースポーツとは関係がないんですけど、サーキットにモータースポーツファンが集まって平和にまつわるイベントができたらいいと思うんですが、琢磨チャンはそういうことに関心がありますか?」と琢磨君に投げかけたところ、「僕も世界の平和については関心があります。そもそも平和じゃないとスポーツはできないし、スポーツには世界をひとつにするという役割もあります。もちろん、スポーツだけじゃなくて芸術や文化全般も同じだけれど、いろいろな国でそういった活動を続けることが世界の平和につながると思います」と琢磨君は持論を展開。その様子を、ファンの皆さんは興味深そうに聞き入っていました。
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さて、質問コーナーが終わったところで私のお役は御免。続いて、こちらも皆さんお待ちかねのお楽しみ抽選会が始まりました。
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今年の目玉賞品は、デトロイトで2位に入ったときの表彰式で琢磨君が実際にかぶったキャップ。しかも、デザインが異なる3種類が豪勢にプレゼントされました。もちろん、すべて本物で、世界中にひとつしかないものばかり。こんな大切なモノまでプレゼントしちゃう気前のよさが、いかにも琢磨君らしいですね。さらには、こちらも琢磨君がシーズン中に着用していたドライバーズTシャツ、ドライバーズパーカー、ドライバーズキャップなどが次々とプレゼントされましたが、いずれも販売用に製作されたものではなく、琢磨君が着用するために製作され、そして琢磨君が実際に着用したモノばかり。なかには「まだ洗濯していません!」なんて賞品もありましたが、市販品とオリジナルの違いを見分けるポイントも紹介されたりして、私も「おお、そうなんだ!」とちょっと驚いたりしました。
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抽選会の次はこちらも恒例のジャンケン大会。ただし、賞品は前述のとおりショーカーに乗り込んで琢磨君とツーショット撮影ができる権利とされました。さらに、今回は新たな試みとしてジャンケン大会のなかに“お子様コーナー”を新設。こちらも大好評でした。続いて、例の100戦記念パネルをプレゼント。こちらもジャンケンで決まった1名の方にお贈りしました。
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その次はTCMのメインイベントというべき握手会。この日のために琢磨君が1枚1枚サインしたカードを手渡しながら、ファンの方々と握手して直にふれあう時間です。このとき、琢磨君に伝えたい言葉を用意してきた方々も多かったはず。皆さん、きちんと思いを伝えられましたか? そして今年もたくさんのプレゼント、本当にありがとうございました。琢磨君、イベント後にしっかりクルマに積み込んでいましたからね。ご安心ください!
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そうそう、握手会の裏番組としては、こちらも恒例の「マッチャンに質問コーナー」も実施。「今シーズンは雨のレースが多かったと思いますが、カメラマンにとって大変なことはありませんか?」という質問には「雨が降るとタイムスケジュールがずれる可能性があって難しい。また、写真的には水しぶきが上がって撮影しづらい」と答えたマッチャンこと松本浩明カメラマンは、続けて「飛行機での移動が多いと思いますが、これまででいちばん怖かった経験は?」と問われると「滑走路で加速していったのに減速して結果的に離陸しなかったこと。あとはバルセロナで強盗に遭いかけたこと」などと回答。世界中を飛び回るカメラマンらしい苦労話を聞かせてくれました。
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握手会の最後には、これも初めての試みとなるキャップの投げ込みを行いました。皆さん、ちゃんとキャッチできましたか? そして最後は琢磨君と会場の皆さんが1フレームに収まっての写真撮影。これは松本カメラマンがシャッターを切ってくれました。こうしてTCMは無事閉幕、と思えたかもしれませんが、実は緞帳が降りたステージの上では、ジャンケン大会の賞品となった琢磨君とのツーショット写真撮影が静かに行われていたのです……。
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で、今年もあっという間に終わってしまいましたね。イベント終了後もオフ会で街に繰り出した方々も少なくなかったようです。また、遠方からお越しになった方々は飛行機や新幹線にちゃんと間に合ったでしょうか? 皆さん、無事に帰宅されたことと存じます。
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そしてTCMが終わって4日目の12月16日、琢磨君が2016年もAJフォイト・レーシングから参戦することが正式に発表されました。このニュースを聞いて「ああ、やっぱり」と思ったお客様も多かったことでしょうね。でも、その理由は絶対に打ち明けないでくださいよ!! 本当に今年もありがとうございました。また来年もTCMでお目に掛かりましょう。それでは!!
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