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Report
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ビデオ解説はいきなり1時間オーバー
12月15日(土)の午後1時過ぎ、今年も東京代々木の山野ホールに川崎かおりさんの声が響き渡りました。
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「みなさまー、お待たせしました。本日はようこそ、佐藤琢磨スペシャルイベント、Takuma Club Meeting 2018にご来場いただきましてありがとうございます。いやー、今年もこの季節がやってきました。これやらずしてお正月を迎えられないというような感じもしますが、毎年、司会を担当しています川崎かおりと申します。どうぞよろしくお願いいたします!」
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この言葉に続いてステージへの登場を促されたのは、ご存じ佐藤琢磨選手。会場はわれんばかりの拍手に包まれました。
「こんにちは。またこの季節がやってきました。いや、それにしても本当にあっという間ですね。この間、TCMやったばかりじゃないかっていう感じですけど……」
そうそう、この声、この声です。琢磨選手の元気いっぱいな声に、会場に詰めかけたファンの皆さんは固唾を呑んで耳を傾けていました。
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はい、ご挨拶が遅れました。今年もTCMをリポートさせていただきます自動車ライターの大谷達也です。例年、ゲストとしてTCMにお邪魔させていただいている私は、かおりさんと琢磨選手のこんな掛け合いをいつもはステージの袖で聞いているのですが、このときはまだ羽田空港に着陸するかどうかというタイミング。なので、この辺の模様は当日の記録映像を見ながらリポートさせていただいています。
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この直後、昨年のTCMのラストシーンを飾ったインディ500のフィニッシュシーンが流れます。皆さん、覚えていますよね?
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2017年インディ500で琢磨選手が優勝するまでのラスト3周の動画が流れると、ステージに置かれたマシーンのコクピットにいつの間にか琢磨選手が乗り込んでいて、ステージ上で流されている動画とまるでシンクロするかのように立ち上がり、牛乳を一気のみしたあのシーンが今年も改めて紹介されたのです。このときは、暗転したステージ上でいかに客席の皆さんに見つからないようにクルマに乗り込んだエピソードなどを琢磨選手が披露。するとかおりさんから「動画と一緒に流れているロジャー安川さんの声は、レース中に録音されたものではなく、あのイベントにゲスト出演したロジャーさんがその場で話したもの」と暴露。しかも無線交信している音質に似せるため、スタッフが使っていたトランシーバーを使ったなど、スタッフの苦労を紹介したのです。そればかりか、よくよく聞いてみると、ロジャーさんは「来年も勝ちに行こうね」とコメントしていたのですが、琢磨選手は今年のTCM本番を迎えるまで、ロジャーさんがそう言ったことにまったく気づいていなかったそうです。
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いやー、TCMって芸が細かい! こんなところまでこだわるなんて、まるで琢磨選手の熱い思いがそのままスタッフにも浸透しているようですね。本当に驚きました。
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これに続いてはビデオを使っての2018年シーズンの振り返り。今年も琢磨選手、ほぼ1時間にわたってしゃべりっぱなしです。しかも、たとえば今年のインディ500でマシーントラブルを抱えてコース上をスロー走行するデイヴィドソンに追突したシーンでは、琢磨選手のオンボード映像を巻き戻して直前のステアリング操作を解説。「この時点でハンドルを左に切っていますが、タイヤのスリップアングルとの関係でこの角度がもうギリギリ。アクセルペダルも戻していましたが、ブレーキを使うとかえってアンダーステアが増えるので、もうどうにもできませんでした」とドライバー視点でその場の状況を説明してくれたのです。一見したところ不可解なクラッシュシーンでしたが、この話を聞いて一同納得。黒旗を振られていながらすぐにピットインしなかったデイヴィドソンの行動の行動に改めて疑問を抱いた方も少なくなかったことでしょう。
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シーズン前半は苦しみながらも、終盤戦に向けて徐々に成績が上向きになっていった琢磨選手。ついにポートランドではキャリア3勝目となる栄冠を獲得します。ここでも、そのときの状況を琢磨選手がみずから詳報。燃料をセーブしつつ、2番手につけていたハンターレイがもしもレース終盤に襲いかかってきたときに備えてタイアとプッシュ・トゥ・パスを温存していたことなどを知ったファンの皆さんは、昨年のインディ500に続く琢磨選手の頭脳プレイに大きな拍手を贈ったのでありました。
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さらに、シーズン中に早々とレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングへの残留を決めたことに関する裏話も披露。なにがあったか、ここには詳しく書けません(申し訳ありません!)が、やっぱりインディ500ウィナーになるとドライバーを取り巻く環境がいろいろな面で変化することを実感しました。しかも、早いタイミングで来季の体制を固められたのでチームのメンバーは基本的に今シーズンと同じ。さらに、「インディカー・シリーズで革命を起こし続けているエンジニア」のアラン・マクドナルドが琢磨選手のレースエンジニアに就任することが打ち明けられ、来シーズンに対する期待がさらに高まりました。
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会場からの質問に琢磨選手が応える!
ビデオを使ったシーズン振り返りに続いては、これも毎年恒例の質問コーナーが始まりました。最初に登場した男性は、琢磨選手のステアリングへのこだわりに目をつけ、今年新たに制作したステアリングについて質問。しかも、最新ステアリングの模型を自ら制作して会場に持ち込んでいたものだから、これには琢磨選手も大喜び。そのステアリングの特徴やこだわりポイントなどを、琢磨選手からじっくり解説してもらえることになりました。
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続いて指名された小さな女の子は「私はお絵かきが好きですが、琢磨さんは小さい頃、なにが好きでしたか?」と質問。これに琢磨選手は「僕も絵を描くのが好きでしたが、クルマの絵しか描けませんでした」と回答。会場はほのぼのとした雰囲気に包まれました。
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3番目の男性は琢磨選手がSRSのプリンシパルに就任したことに関連して、「優秀なドライバーが登場したら一緒に耐久レースに出場したり、将来的には琢磨さんのチームから出場するのではないか?」と質問。すると琢磨選手は「チームを設立するかどうか考えるよりも前に、まずは自分が現役ドライバーとして絶対的な強さを見せつけないと」とコメント。さらに「次世代の日本の自動車界、日本のレース界を担っていく人材を育てたい」と、SRSに賭ける熱い思いを語りました。
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続いて質問に立った女性は「去年インディ500で優勝した26号車の消息」について質問。2019年3月に鈴鹿サーキットで行なわれるファン感謝デーで走行するとの情報をキャッチしていると前置きしたうえで、「この日は琢磨さんがドライブするのですか?」とズバリ! これに対する琢磨選手の回答は……、申し訳ありません、これもやっぱりここには書けません!!
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そしてTakuma Kids Kart
Challengeのファイナルに出場したという男の子(名前はなんと“琢磨君”!)はお勧めの筋トレについて琢磨選手に質問。すると「琢磨君くらいの年齢だったら、まずはランニング、自転車、水泳などでスタミナを養って!
あとは体幹も鍛えられるボルダリングもお勧め!」と回答してくれたのです。
最後の質問に立った女性が「インディアナポリスでバーを経営するジェフが、琢磨さんの優勝を記念した“SATO 101
Beer”を作ってくれましたが、次に勝ったらどんなビールを作って欲しいですか?」と訊ねると、琢磨君は「もともとすっきりしたビールが好きで、“SATO 101
Beer”もそういうイメージで作ってもらいましたが、次はヘビーなダーク・ビアにしようかな?」と回答したのでした。
これで質問コーナーは終了。今シーズンの振り返りからステージに上っていた私の出番もここで終わり、あとは客席に移って皆さんと一緒にイベントを楽しむことにしました。
最後に待っていたサプライズ・コーナー
質問コーナーに続いては、こちらも恒例の抽選会。今年も豪華な賞品が用意されていて、ポートランドで優勝した際に琢磨選手がかぶったINDYCARキャップやアイオワで3位表彰台に上ったときのFirestoneキャップを始めとして、琢磨選手が実際に使用したドライバーズTシャツ、ドライバーズパーカー、ドライバーズシャツ、ヘルメットバイザー(計3枚)、グローブ、シューズなどが惜しげもなくプレゼントされました。
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さらにジャンケン大会でもシューズ、キャップ、グローブなどをプレゼント。ここでは小さなお子様にグリコ・セレクションも差し上げました。ちなみに今年のジャンケン大会で琢磨選手がもっとも多く出したのはチョキの10回で、次がグーの7回、いちばん少ないのはパーの5回でした。
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来年参加される皆さんは、是非、この情報をご活用ください! さらにポートランドの表彰式で撒かれた星吹雪をパッケージしたスペシャル・プレゼントを用意。これは抽選の結果、なんと客席の“け列”に座っていた全員に送られたのです。
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ここで小休止を挟み、皆さんお待ちかねの握手会が始まります。琢磨選手は会場に集まった皆さんひとりひとりとていねいに握手を交わすと、琢磨選手の直筆サインが入った特製カードをプレゼント。参加者の皆さんにとっては、短い時間とはいえ琢磨選手を独り占めできる大切なコーナーで、これを楽しみにしている方も少なくないそうです。
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握手会が開かれている隣では、今年もたくさんのミニトークショーが催されました。最初に登場したのはレース中のデータ解析などで琢磨選手をサポートするABeamコンサルタンティングの竹井さんと谷口さん。
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続いてかおりさんがTakuma Kids Kart Challengeの活動報告を行ない、さらに琢磨選手のレース活動をサポートするブライトリング・ジャパンのアリヨシさんが登場。アクロバット飛行の室屋義秀さん、モトGPに参戦する中上貴晶選手、そして琢磨選手の3人でThe Japan Racers Squadを結成し、今後様々な活動を展開する予定であることがは発表されました。
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この後もミニトークショーはTakuma Club 応援ツアーを主催する東武トップツアーズの生巣さん、オフィシャルグッズをデザインするプロフィットスポーティングの中村さんなどが登場。生巣さんは2019年に実施予定のトロントとポコノのツアー概要に関して、インディカーGPで琢磨選手が着用したスペシャルヘルメットをデザインした中村さんはそのときの熱い思いなどについて語ってくれました。
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そして大トリはフォトグラファーのまっちゃんこと松本浩明さん。いつもの温かい語り口調で「よかったですね、今年は1勝できて。あれがあるかないかでは大違いなんですが、勝つのは1回だけじゃなくてもよくて、2回でも3回でも勝って欲しい」と、琢磨選手に寄せる熱い思いを吐露してくれました。
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そうこうしている間に握手会も終了。ここで、秘密のビデオ映像を使ったスペシャルコーナーが繰り広げられたのだけれど、あー、これも詳細はあまりお伝えできないなあ。ひとつだけヒントを差し上げると、まだ10歳だった琢磨選手の人生を変えることになった1987年F1日本GPに関係したもので、琢磨君の夢がかなった瞬間をまとめたもの、となります。まあ、これだけではなんのことだかさっぱりわからないかも知れませんが、正直いって、私はこのシーンがいちばんジーンときたなあ。会場にいらっしゃった皆さんも、同じ気持ちだったのではないでしょうか?
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さて、イベントももう大詰め。最後に挨拶した琢磨選手は「モチベーションも身体も気持ちもいまがいちばん高いところにあるので、来季も最高の走りをお約束します」と宣言。「これからも頑張って行きますので、来年もTCMで会いましょう」とコメントしてTCM2018は幕を閉じました。ここまで、およそ5時間。しかも、握手会の前に短い休憩をとったのを別にすれば、琢磨選手は最初から最後までステージに立ちっぱなし。この情熱は本当に驚きですし、こうしたファンの皆さんへの思いがあるからこそ、毎年たくさんの方々がこのイベントを楽しみにしてくださっているのでしょうね。はい、私も満喫しました。
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そして来年は琢磨選手がインディカーへの参戦して10周年を迎える大事なシーズン。琢磨選手がレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングとどんな活躍を見せてくれるかももちろん楽しみですが、それを受けて実施されるTCMも本当に楽しみですね! 来年こそは私も遅刻せずに参加しますので、またTCMの会場でお目に掛かりましょう!
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それと、今年の会場内でのディスプレーをご紹介します。
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2011年の東北大震災から毎年活動を続けている「With you Japan の活動報告コーナー」 として、開催イベントの写真や2017年使用したカートのカウルを展示致しました。
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ディフェンディングチャンピンとして迎えた2018年のインディ500関連コーナーとして、優勝したドライバーに贈られるベイビーボルグワーナートロフィーや、前哨戦となったインディカーグランプリで使用したスペシャルヘルメット(チャリティーオークションでの落札者の方のご好意で展示させていただきました)、また、大谷翔平選手が所属するエンジェルスの始球式で使用したグローブ(大谷選手のサイン入り)、佐藤が2017年インディ500優勝を記念して作った“SATO
101 Beer”を展示しました。
また、ポートランド優勝記念コーナーとして使用したヘルメット、レーシングスーツ、グローブ、シューズ、優勝Firestoneキャップ、シャンパンファイトで使用したシャンパンの瓶、そして獲得した優勝トロフィーも展示されました。
会場では展示だけではなく、TCM先行販売のTSオフィシャルグッズの販売や、TSオフィシャルカレンダー購入者対象の松本浩明氏サイン会も行われました。
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