takumaclubのみなさん、おひさしぶりです! モータースポーツ・フォトジャーナリストの松本浩明です。いつもギャラリーページには毎レースごとの写真をアップさせていただいてますが、原稿を書き書きするのはひさしびりですねw。
日本はお盆も過ぎて、いよいよもてぎのインディ・ジャパンが迫って来ていますね!takumaclubのみなさんもきっとコスチュームやら、バナーやら、バーベキューの手配とか!? いろいろ準備をしていることでしょう。
僕も琢磨選手をフォローしながら、2010年初めてIZODインディカーシリーズを追いかけています。従来どおりF1の撮影取材も続けていますから、3月から本当に毎週のようにアメリカとヨーロッパを行き来しています。もうすでに2シーズン?分を消化してしまった感じですね。
どんなに忙しくて疲れても、レース結果が良ければ、レースの内容が良ければ、快くサーキットを後にすることが出来ます。しかし、こと今年のインディに限っては、なかなかそういうレースにはなっていません。
タイトルの「どうしてワサビさんは壁に向かってしまうのか?」というのは、僕のブログに書き込まれたファンの人の素朴な疑問でした。まったくそのとおり、どうしてなの?と思っているファンの人も多いでしょう。
(あ、ちなみにワサビさんというのは琢磨選手のこと。インディでアメリカのファンがつけてくれましたw)
ここまで(第12戦ミドオハイオ終了時)琢磨選手の成績はかんばしくありません。いーえ、はっきり言いましょう。悪いです、最悪。もー、大変って感じ‥‥。
応援を続けてくれる日本のファンのみなさんだって、もうちょっと良かっただろう、もっとなんとかなったんじゃない? F1の経験があるんだから‥‥。そう思われた事でしょう。実際に僕もそう思っていましたよ。
琢磨選手とは長いお付き合いですが(笑)、ここまで苦労したシーズンというのを僕は知りません。初めてフル参戦したイギリスF3の一年目でもポールポジションや優勝はありましたし、とても厳しい状況だった2002年のF1一年目でも、鈴鹿以前にもシングルフィニッシュはありました。
例えばここまでインディ12戦分の結果には、12戦分のいろんな理由があるでしょう。ここですべての理由を見つけて説明しようとしてもキリがありません。
しかし、今、琢磨選手がどんな状況に置かれて戦っているのかは、伝えておく必要があるでしょう。
琢磨選手のインディ参戦が決まったのは2月のことでしたね。事前にインディカーのテストを行ったわけでもなく、新チームのKVレーシングのファクトリーでシートフィッティングを行い、バーバー(アラバマ州)で行われたたった1回のテストでシーズンインとなったのです。その間わずか3週間。どれだけ準備が出来たというのでしょう。行われる17戦のコースは走ったことのないトラックばかり。ロードコースもあれば、オーバルあり、市街地あり、空港あり(笑)、単純にバラエティに富んでいるという言葉では片付けられないほど、いろいろありすぎです。唯一走ったことのあるインディアナポリスでさえ、逆回りだったんですからね(笑)。どのコースに行っても、着くなり本当に驚くことばかりです。インディ独特のルールや、コースごとに違うタイムスケジュール、タイヤウォーマーのないコールドタイヤ、何もかも初めてづくしのレースに、琢磨選手ほどの経験を持ってもアダプトするのが精一杯という感じでした。
それでもオーバルでのカンザスでは上位を走行していましたし、アイオワでは表彰台を狙える位置にいました。ロードコースのワトキンスグレンで予選5位、ミドオハイオで予選3位からレースは一時2位まで浮上していました。結果には繋げられなかったものの、時折は琢磨選手らしい速さを見せてくれています。それは琢磨選手が、もの凄い勢いでいろいろな事を吸収している証拠なのでしょう。その成果が実を結ぶのは、そう遠い日ではないと思っていますが‥‥。
じゃあちょっと視点を変えて考えてみましょうか。
今、インディでトップを走っているウィル・パワーやダリオ・フランキッティがいきなりF1に行ったとしたら、どのあたりを走っていると思いますか? フェルナンド・アロンソやセバスチャン・ベッテルとトップ争いをしてる? 可夢偉選手とバトル?それとも、それとも‥‥?
もちろん答えの出ない空想にすぎませんが、インディのトップコンテンダーがF1でいきなりは通用しないように、F1からインディに来ても、そう簡単に結果は出ないものです。過去にはナイジェル・マンセルやアレックス・ザナルディを引き合いに出すこともあるでしょうが、彼らにはいきなりトップチームに歓迎され、テストを十分する時間もあったでしょう。
失敗からは多くの事を学べるはず。だからワサビさんは、すんごい量!(笑)の事を学んだはずです。その成果を見せてもらえるのが9月のもてぎであれば、これ以上の事はありませんし、もしワサビさんが来年もインディを走っていれば、がっかりすることはないでしょう。少なくても今年以上にはねw。
松本浩明
1966年6月生まれ。オリビエ・パニス、J.J.レート、服部尚貴、長嶋一茂、小泉今日子らと同じ年。肩書きはモータースポーツ・フォトグラファー&ジャーナリスト、というなんでも屋。学生時代からサーキット通いに勤しみ、卒業後、出版社に入社。主として国内レースの取材を開始。1993年、意を決して(?)渡英。 F1を始めとしてF3000、F3、ツーリングカー、ル・マン24時間レースなどヨーロッパのレースを中心に取材。2002年帰国。現在、F1速報、東京中日スポーツなどに寄稿。2004年、佐藤琢磨のレースを綴った「頂点へ」(イデア)を、2008年には同じく「反撃」を上梓。今も売れ残っているが、サーキット取材の日々を紹介するブログ「ピーノ!ピーノ!まっちゃんの本“松”転倒記」(http://blogs.yahoo.co.jp/hirophoto2002)は意外に好評。