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マルボロマスターズ オランダ ザンドボード |
■プロローグ 8月2日、出発の前日、琢磨は自信と期待と不安が入り混じった表情で「俺、マスターズ勝っちゃうぜ!?そしたら俺は世界一だ!!」と自分自身に言い聞かせるかのように繰り返し(20回くらい)呟いていた。そう、ついにこの時がやって来たのだ!僕らは大いなる期待を胸にオランダへ旅立った。 |
■8月4日 フリープラクティス ザンドボードのサーキットは海岸沿いの砂地にあるので、コースサイドも土ではなく、全て砂で覆い尽くされている。そして海沿いなので当然風が強い。つまり、非常に埃っぽいサーキットなのだ。コースレイアウトはバラエティに富んでいてチャレンジングだ。ホームストレートもかなり長いので、オーバテイクシーンが期待できそう。不安なのは未知のBSタイヤくらいか。 琢磨は積極的に周回を重ねるが、コースを熟知するシェクターのタイムには届かず、2回のセッショントータルで6番手となった。優勝を目指すには今ひとつ不安の残るスタートとなった。 |
■8月5日 予選 予選はゼッケンの奇数組と偶数組に分けて行われた。琢磨は偶数組である。午前中の1回目の予選は風も弱く、気温も必要以上に上がらなかった為、タイムアタックには絶好のコンディションとなり、各車、好タイムをマーク。偶数組は琢磨とJ・コシェの熾烈なPP争いとなったが、最終的には、コシェ1分33秒192、琢磨1分33秒214、となり、僅か0.022秒及ばず偶数組の2番手、トータルでも2番時計だったが、3番グリッド(タイムの速かった方の組から1,3,5、遅かった方の組が2,4,6と組ごとに縦に並ぶ為、3番グリッドになる)となった。前日の調子からすれば上出来だったのでチームはこの結果にも満足だったのだが、かなりの手応えを得ていた琢磨は、ポールを獲れなかったことに不満げで、笑顔ひとつ見せなかったのが対照的だった。 午後の予選は大方の予想通り、気温も上がり、風も強くなりタイムアップできる状況ではなくなってしまったので、琢磨は明日の決勝に照準を合わせて、セッティングを煮詰めることに専念した。 |
■8月6日 決勝 朝のウォームアップは使い古しのタイヤで走ったので、1分35秒328で10番手となったが、昨年の決勝でのファステストラップが1分35秒5前後だった事を考えれば、順当なタイム。トップのコシェの1分34秒300というタイムはまず決勝では不可能(おそらく少ない燃料で走っていたはず)だろうと私は読んでいた。 決勝はまず、4番グリッドのナレインのエンジンストールにより、20分程ディレイ。彼は最後尾スタートとなった。そして待ちに待った(僕も緊張で気分が悪くなった)で再スタートだったのだが、あろうことか、今度はなんと琢磨がストール!(この時、1コーナーで固唾を飲んで見守っていた日本人プレス達の落胆ぶりは凄まじかった。僕は猛烈な脱力感に見舞われた。)彼のスタート失敗を生まれて初めて見た。いつもスタートを得意とする琢磨のことだったから、一瞬目を疑ったが、彼はピットに連れ戻されて、再スタートすることになり、レースはアクシデントの為セーフティーカーが導入されていた。琢磨はピットロード出口でオフィシャルに止められてしまい、タイミング悪く1周遅れでのレース復帰となってしまった。 こうなっては順位的なものは何も望めないが、ともかく琢磨の走りを見守った。見かけの順位は37位最後尾からの再スタート。そこから琢磨の怒涛の追い上げが始まった。とにかく毎周順位を上げてくる。まずは不運にもテールエンドスタートとなった福田選手やピッツォニアなどの強豪を軽々とオーバーテイクして、その後もペースは一向に衰えず、大渋滞の網目を縫うように順位を上げていった。 結局最終的には18位まで追い上げ、ただひとり異次元のポジションアップを果たすが、リザルトに残ったのはマイナス1Lapの28番手という、必死の頑張りに見合わないものであった。しかし、あの状況でベストラップがレースファステストの0.1秒落ちというは、本当に立派だと思う。(いつクリアーラップがあったのか、見ているほうは分からないほどだったからだ)我々にも容易に察しがつくほどその混沌とした精神状態の中で、クルマはかすり傷ひとつなく、琢磨は素晴らしく力強いレースを観せてくれた。(実際1コーナーで観ていた観衆は、彼の追い上げにかなり盛り上がっていた)レース後にモータホームでうな垂れる琢磨のもとに、観客の数名が素晴らしい走りだったと伝えに来てくれたほどなのだから。 ここ数日、琢磨はやり場のない怒り(実は僕もですけど。)にもがき苦しんでいますが、きっとシルバーストンでは痛快なレース(もちろん琢磨は絶対にポールトゥウィンだ!と意気込んでいます。)を見せてくれると思いますので、僕らもまた立ち上がらなければと思います。 |
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