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イギリスF3 第13戦 スパ・フランコルシャン |
■9月21日 フリー走行 昨年はFINAマスターズとして開催されたスパラウンドでのレース。今回はELFマスターズに冠スポンサーが変更になったものの、数多くのサポートレースが組み込まれ、今年も盛大なレースイベントとなった。ただ、ドイツF3と日程が重なってしまった為、F3のエントリーは30台とFIAカップのF3レースとしては少なめになった。 琢磨にとっては得意のスパ。フリー走行でも、いきなりトップタイムをマーク。本人はセットアップには改善の余地があり、完璧ではないと語っていたが、それでもトップタイムなのだから、好調な滑り出しといって良いだろう。 |
■9月22日 今日はF3の走行はなく、休息日となっていたので、琢磨と僕はドイツのニュルブルクリンクに行くことにした。目的は観戦ではなく、かの有名なオールドコースを走ること。ご存知の方も多いとは思いますが、オールドコースは一般車にも開放されていて、誰でも走ることができるのです。かつて琢磨と僕は色々なビデオでこのコースの凄まじさを知り、「いつか走ってみたいね」なんて話していたものでした。ニュルまでは地図で見る限りは1時間半くらいで行けそうな雰囲気だったのだが、似たような地名に惑わされて、かなり苦労してしまった。そして到着してみると、なんと今日明日は貸切りで、シャットアウト…残念。琢磨はかなりがっかりしていた。でも、明日にはF3でスパを走れるのだから、まだ良いと思うんだけど。 |
■9月23日 予選 今日のスパは珍しくキレイに晴れ渡った青空。いつもの霧のかかった神秘的なスパも良いけれど、明るく晴れていると豊かな自然が際立って、とても美しいサーキットである事が良く解かる。 肝心の予選はラソースで観ていたのだが、やはり琢磨はドライビングがスムーズだ。ブレーキング、シフトダウン、ターンイン、アクセルオンの一連の動作が途切れることなく流れるように行われている事が解かる。しかし、琢磨の面白いところはレースになると豹変したようにアグレッシブになるところで、もちろんスムーズなドライビングは変わらないのだけれど、皆さんご存知のロケットスタートも、スタートの鋭さもさることながら、躊躇無く前を行くマシンの隙間に突っ込んで行く思い切りの良さによって、更なるポジションアップを得ている事が多い。そして、オーバーテイクの激しさは折り紙付き。競り合いになったときは絶対に引かない。おそらく琢磨がイギリスでも人気者なのは、このバトルの激しさによるところが大きいのだと思う。 話しが横道にそれてしまったが、予選1回目、唯1人、2分15秒台に突入して暫定ポールを得た。しかし、ここでちょっとした問題が発生。2番時計のベンと3番時計のピッツォニアが、バスストップシケインの切り返しで、ショートカットしてタイムを稼いだとの報告が。確かにショートカット可能なポイントではあるが、これは明らかにアンフェア。しかし、オフィシャルは問題無しとの見解を示し、2回目の予選では、ほぼ全員がショートカットするという事態になってしまい、まるでラリーのような、異様な光景となった。 一説には普通に走っていたら、とてもではないが琢磨の速さには追いつけない為、苦肉の策なんて話もあったが、実は琢磨は縁石を飛び越えるのは大の得意。昔話で恐縮だが、97年、レーシングカートの地方選手権、新東京サーキットでの事だった。このコースは元来縁石を跨ぐS字区間があって、琢磨はそこが速かった。まだ続きがあって、雨の時はそこでのライン取りも当然変わってくるのだけれど、雨の予選で、琢磨は1人だけ違うラインを発見し、驚異的なタイムを叩き出したのだった。もっとも、そのせいでカートの下回りはガリガリに削れてしまったのだが…。 で、琢磨もショートカットを使った結果、1回目でコンマ3秒弱だった2番手との差がコンマ8秒にも広がってしまい、こうしてベンとピッツォニアの禁じ手は残念ながら裏目に出てしまったのだった。しかし良い事ばかりではなく、飯田さんとジョンがマシンのフロアを覗きこんで話しているので、琢磨と僕も覗いてみると案の定ガリガリに削れていて、皆で苦笑い。まあ、ブッチギリのポールだから良しとしましょう。ちなみに決勝では、このショートカットは禁止されることになった。 2番手はフランス組のモンテイロ。彼は前回のフランス選手権の時の第1レースでもポールを獲っているし、ここのところ好調で2連勝しているので要注意。 |
■9月24日 決勝 残念ながら、レースはスタートする前に終わってしまった。琢磨によると、フォーメーションラップ、バストップシケインに差し掛かった辺りで、ギヤが3速に入ったままスタックしてしまったとのこと。琢磨はこの珍しいトラブルのせいでピットインすることになり、レースは主役を欠いたままスタートした。 その後、琢磨のマシンは、周回遅れながらレースに復帰。皮肉にもその位置がトップのモンテイロの前だったので、見た目には琢磨がレースをリードしているかのように見えた。そして琢磨は、絶望的な状況ながら、ファステストラップをマークし、後続をどんどん引き離して行った。それは本当に桁違いの速さだった。普通、あんな状況になったら、ヘルメットを脱ぎ捨ててマシンから飛び降りるところだが、琢磨はバイザーを下げたまま、じっと修復されるのを待っていたのだ。 この日、スパに居合わせた全ての人達は、誰が一番速いのか、誰が本当の勝者なのか理解していたと思う。あまりにも残念な結果にはなってしまったが、琢磨は100%自分の仕事をこなしたのだ。本当によく頑張ったと思う。 次は相性抜群のシルバーストーン。レイアウトは今までのインターナショナルコースからGPコースに変更になるが、そんな事は関係無い。琢磨はどのサーキットでも誰よりも速いのだから。 |
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