Report
「2010年のインディ初参戦から着実にステップアップし、ついにトップ争いをするまでになった2012年。2度の表彰台、そして世界でもっとも歴史のあるレース、インディ500で見せたファイナルラップでの歴史的なトップ争い。あと一歩のところでつかみかけた栄冠……。そしてAJフォイト・レーシングに移籍した4年目のシーズン、ファンが待ち望んでいた夢が、ついに実現した」
Takuma Club Meeting(TCM)のオープニングと言えば、大音量のバックミュージックとともに流される迫力のレース映像というのがこれまでの定番でしたが、今年はどこか重々しい雰囲気に包まれた川崎かおりさんのMCで幕を開けました。なぜ、今年だけこんなに特別な演出になったのか、ファンのみなさんだったらいまさらご説明するまでもありませんよね。そう、2013年に琢磨君はインディカー・シリーズ参戦4年目にして初優勝を達成。それを記念して“The First Victory”というサブタイトルがつけられたのが、今年のTCMだったのです!
いやあ、それにしても長かった。なにしろ、2013年インディカー・シリーズ第3戦ロングビーチの前に琢磨君が優勝したレースといえば、実に2001年11月のマカオGPになるんです。つまり、12年ぶりの優勝! しかも、TCMが初開催されたのはその翌年の2002年だから、少し意地悪な言い方をすると、琢磨君が優勝したのはTCM史上、初めてのことだったわけです。私がいうのも変ですが、ホント、みなさん長いことをお待たせしました!
というわけで、今年もTCMをリポートさせていただくのは、私、大谷達也です。どうぞよろしくお願いします。
で、イベントの裏話をちょっとだけしちゃうと、前述の“The First Victory”というサブタイトルはすんなり決まりましたが、そのほかにも、この記念すべきTCMをなんとか盛り上げようと事前の打ち合わせでは様々なアイデアが提案されました。そのうちのひとつが、アメリカンモータースポーツ・ジャーナリストである天野雅彦さんのゲスト出演であり、もうひとつが、イベントの最後を飾った“あのシーン”だったわけです。そのほかにも会場内の通路には琢磨君が優勝した翌日の新聞がずらりと展示されていたり、記念写真撮影コーナーなども用意されていて、“The First Victory”の雰囲気を盛り上げてくれました。
いっぽう、イベントの進行は基本的に例年と同じで、かおりさんの紹介で琢磨君が登場。続いてゲストである天野さんと私が呼び込まれ、簡単なあいさつの後、いまやTCMのメインイベントとなりつつあるビデオコーナーに入りました。これはインディカー・シリーズの全19戦をダイジェスト版のビデオで振り返るというもので、上映時間52分33秒の大作。ちなみに、19戦のうち3戦だけ取り上げられなかったレースがあったんですが、気がつきましたか? 正解は第8戦テキサス、第12戦トロント、第14戦ミドオハイオの3レースでした!
このうち、なんといっても面白かったのが第11戦ポコノで起きたライアン・ハンター-レイとの接触シーン。テレビで流れた映像だけを見ていると、琢磨君のケアレス・ミスに思えなくもなかったアクシデントですが、ホワイトボードを使った琢磨君の解説により、どうしてあのとき琢磨君は避けることができなかったのかが明確になりました。いつもトークが上手な琢磨君でしたが、あのときの説明は最高でしたよね。実は、あのホワイトボードを使った解説は、イベント直前のリハーサルで決まったもの。琢磨君が突然「じゃあ、ここはホワイトボードを使って説明しましょう!」と言い出したので、スタッフのみなさんが懸命に機材を探し出し、本番までに用意してくれたのです。
ビデオコーナーに続いては、こちらもお馴染みの質問コーナー。それにしても今年は質問のレベルが高かった! 1問目はステアリング絡みの話。実物の4倍はあろうかというステアリングの模型をファンのみなさんが用意して下さり、これを使って琢磨君に詳しい話を聞くというのが質問のお題でした。ここで琢磨君は、標準装備のステアリングはリムから操作パネルまでの距離が遠いため、追加のパネルをカーボンで作成、親指の近いところにスイッチを作ってもらった話とか、LED式のレブカウンターではシフトアップを促す最後のセクションを視認性の高いブルーLEDに交換してもらった話などを披露。「前にいたチームでも青に変えて欲しいと頼んだんですが、時間の掛かる専門業者に頼む為、なかなか受け入れてもらえなくて。ところが、AJのチームではあっという間に発注してくれて、僕の希望どおりのものができあがりました」なんてエピソードも聞けました。
そのほか、「琢磨君はスタートが得意なはずなのに、なぜ日本のスーパーフォーミュラではスタートで順位を落とすことが多いんですか?」とか、「もしも琢磨君がチームオーナーになったとしたら、AJフォイト、鈴木亜久里、山本尚貴、佐藤琢磨、ジミー・ヴァッサーのうちの、誰を起用しますか?」とか、「インディカーの速さをカートにたとえて説明して下さい」とか、「アメリカでのインディカー映像収録の裏話を聞かせて下さい」など興味深い質問が続出。そのひとつひとつに琢磨君がていねいに答えていったおかげで、あっという間にこのコーナーも終わってしまいました。質問して下さったみなさん、ありがとうございました!
ここで天野さんと私は降壇。続いて、こちらも恒例のプレゼントコーナーとなったわけですが、今回は初優勝記念ということで、本当に豪華な賞品がたくさん用意されました。このうち、最大の目玉賞品となったのが、ロングビーチ優勝記念限定TSキャップ。これ、実は非売品なんです。しかも、当日は琢磨君のサイン入りでプレゼント。当たった人は本当に幸運でしたね! その他にも各種キャップ、使用済みヘルメットバイザー、AJフォイトレーシング・オリジナルワイン(これ、欲しい!!)、Tシャツ、ブルゾンなどが目白押し。計19名のみなさんにプレゼントを差し上げました。
さらにさらに、今年もやってきましたジャンケン大会。しかも、賞品は琢磨君の使用済みレーシングシューズ、レーシンググローブ、サンパウロGP2位表彰台記念IZODキャップ、2013年版使用済みチームシャツと飛びきり豪華! じゃんけん大会は「抽選のように運だけではなく、実力で勝ち取って欲しい」という琢磨君の願いから生まれたコーナーなので、賞品も本当に特別なものが選ばれたんですね。賞品を勝ち取ったみなさん、本当におめでとうございました!
続いて、こちらはサプライズ企画。琢磨君が優勝したGAORAさんオンエアの「インディカー・シリーズ2013」が、今年1年間にスカパー!で放送された番組のなかから選ばれる人気投票でベスト10に入る「ココロが動いた番組賞」を受賞。これを記念して、視聴者代表のプレゼンターである持木軌道さんからトロフィーが琢磨君に贈られたのです。これ、念のために付け加えておきますと、スカパー!で1年間にオンエアされた全番組が対象となる賞、ですからね。そのなかでベスト10に入ったということは、いかに多くの人たちが琢磨君の優勝シーンにココロを動かされたかの証明といってもいいと思います。
その後は松本浩明カメラマンによる記念撮影に続いて、お待ちかねの握手会。イベントに参加した全員がステージ上に上って琢磨君と握手し、直筆サイン入りカードを琢磨君本人から手渡されるというこのコーナーは、ほんのわずかな時間ですが琢磨君を独り占めできるとあって、ファンのみなさんにとっては貴重な機会となっているようです。今年も短い言葉を交わしたり、なかにはハグしたりとサービス満点の琢磨君でした。
いっぽう、この握手会と並行して、松本カメラマンとかおりさんによる「まっちゃんに挑戦! おもしろキャプションコンテスト」、そして天野さんと私による「なぜ、佐藤琢磨はすごいのか?」という激論コーナーを今年は実施。延々と続く握手会をほんのり盛り上げました。
そして、ここからが本当のサプライズ企画。まずは暗くなったステージ上で琢磨君が優勝したロングビーチGPの映像が流れ始めます。これと並行して、AJフォイト・レーシングのマシーンを象ったカットアウトパネルをステージに展示。さらには、レーシングスーツに着替えた琢磨君が、ロングビーチGPの表彰式で登場したキャンペーンガールと同じ衣装をまとったモデルさんとともに登場します。そしてウィニングサークルでのシーンにあわせて走り寄った松本カメラマンが琢磨君に日の丸を手渡すと、これを琢磨君が掲げて、あの感動の優勝シーンが再現されたのです。
これはねえ、イベント当日、ものすごい勢いで何度もリハーサルしましたよ(笑)。もう、スタッフ全員で必死になって、いかにリアルに再現するかにこだわりました。正直、そのときは私も笑ってしまいましたが、本番のときは、なにか不思議な雰囲気に包まれましたね。琢磨君や松本カメラマンだけでなく、会場にいらっしゃったみなさんも“あの瞬間”の感動を思い出したようで、涙ぐんでいる方も少なくありませんでした。その後、琢磨君は「僕自身は、ひとつの目標は達成しましたが、まだまだこんなもんじゃない」と力強くコメントしてくれましたが、このとき、琢磨君の瞳にもうっすら涙が浮かんでいるように思えたのは、きっと私だけではありませんよね。
さらには、ロングビーチGPの表彰式と同じ星形に切った花吹雪が会場を舞い、感動的な雰囲気に包まれながらイベントは幕を閉じました。
初優勝の感動を完全再現してフィナーレを迎えたTakuma Club Meeting 2013。来年は、私たちにどんな感動を届けてくれるのでしょうか? 参加して下さったみなさん、そして参加したかったけれど都合で参加できなかったみなさん、1年後にTakuma Club Meetingの会場でお目にかかりましょう! それでは、ごきげんよう!!