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客席は見渡す限り琢磨、琢磨、琢磨の群れ……。そんな、ちょっとあり得ない光景が見られたのは、12月5日に今年も東京・代々木の代々木ホールで開かれたTakuma Club Meetingでのこと。なぜ、そうなったかというと、新型コロナ感染症対策の一環として、琢磨クンのヘルメットに見立てたフェイスシールドを観客の皆さんに着けていただいたからでした。それにしても、あの景色はしばらく忘れられないなあ。それくらい、インパクトがありましたよ!
皆さん、こんにちは! 自動車ライターの大谷達也です。今年もTCMにゲスト出演させていただき、おかげで冒頭に書いたような光景を目の当たりにできました。私も登場シーンでちょっとだけ例のフェイスシールドを着けましたが、少し窮屈で息苦しくて、きっと3時間以上もあのままでいるのは大変でしたよね。本当に申し訳ありませんでした。
そして様々な事情で会場にお越しいただけなかった皆さんにもお詫び申し上げます。そこで、ご来場いただけなかった方々に少しでも楽しんでいただきたいという思いからスカパーを通じてリモート配信させていただきました。運営サイドとしては、リモートでご視聴いただいたみなさんにも会場にいる雰囲気を味わって欲しいと様々な工夫したつもりでしたが、お楽しみいただけたでしょうか? うーん、来年こそはこんなコロナがすべて収束して、みなさんと一緒になにも心配なくTCMを楽しみたいですよね! そんな願いも込めつつ、ここでTCM2020の様子を振り返ってみましょう。
いつもどおり格好いいオープニングビデオに続いてステージが明るく照明されると、琢磨クンがインディ500で操った30号車が浮かび上がるというエキサイティングな演出でイベントは幕を開けました。ちなみに、あの30号車、本当にホンモノの、インディ500ウィニングマシーンです。よく、こういうときに展示されるマシーンって、ホンモノそっくりだけど中身がないモックアップが使われるんですが、今回は正真正銘のホンモノ。正直、モックアップとホンモノでどこがどう違うのか、外観からはわかりにくいけれど、やっぱりホンモノは重厚感というか精密感というか、なんだかオーラが違います。いやあ、本当にすごかったです。
そしていつものようにMCの川崎かおりさんが登場。黄色いロングジャケットがオシャレでしたねえ。かおりさんの短いあいさつに続いて、「それでは早速チャンピオンをお呼びしましょう!」のかけ声でステージ上に現れたのが琢磨クン。今回は黒いジャケットにブルージーンズというシックなスタイルで登場です。「みなさん、こんにちは! 帰ってきました! 勝ちました!」という第一声に続いて、「本当にスペシャルな優勝だと思うんですけど、とにかく皆さんの応援に感謝するしかありません!」とファンの皆さんにお礼を述べたのであります。この辺が、いかにも律儀な琢磨クンらしいですよね。
さらにシーズンが無事に終わったこと、新型コロナ感染者数が世界一多いアメリカでの暮らしぶりなどを語ったあとで、今回ステージに飾られたウィニングマシーンは琢磨クンがホンダの八郷隆弘社長に「おねだり」して買っていただいたものであることなどを披露。ときに軽妙で、ときにずしっと重い琢磨クンの言葉に皆さん深くうなずいている様子でした。
その後は私がステージ上に呼び出されてご挨拶。そしていつもどおり、ビデオを使いながらシーズンを振り返るコーナーに入りました。そうそう、今回はツイッターで#TCM2020をつけてつぶやくと随時ステージ上のスクリーンにそのコメントが表示されるという試みを行ないましたが、いかがでしたか?
少しはライブ感を味わっていただけたでしょうか?
なかには会場からツイートして下さったお客様もいらっしゃいました。本当にありがとうございました!
今年もビデオの振り返りコーナーはおよそ1時間と充実した内容。ツイッターでも「琢磨さんの解説でシーズンを振り返るなんて贅沢」とか「ほんと幸せ」というコメントが目立ちました。そしてビデオ開始から20分ほどが経過したところで、ついにインディ500がスタート!
もう何度も見た映像だし、琢磨クンのコメントもたくさん聞いていたけれど、やはり映像と同時並行で琢磨クンの解説を聞くと理解の深さが全然違って、まさに贅沢な体験! 気温の変化やミクスチャー設定に関しても、私がこれまで聞いたことがないコメントがいくつも飛び出してきて、本当に驚きました。それにしても、琢磨クンってすっごいいろいろなことを考えながらレースを戦っているんだと改めて驚きましたし、それをまた事細かに覚えていて本当にすごいですよね。
そしてビデオが終わったところで、今シーズンについて琢磨クンは「(コロナ禍のなか)スポーツこそがみんなにエネルギーを与えることができると考え、常に100%で戦い続けたシーズンでした」と締め括ったのです。
この後はステージ上のマシーンを使っての解説コーナーとなり、エアロスクリーンの効果とその影響、いくつものスイッチがつけられたステアリングの操作方法などについて教えてくれました。このときのお話しは、メカ好きでなくともとても興味深く、そしてわかりやすかったですよね。
さらにインディ500で披露したグリコ・ポーズが道頓堀や渋谷スクランブル交差点にも登場した話題で大いに盛り上がりました。その際に私が提案した「琢磨クンのグリコ・ポーズをあしらったキャラメル作ったら売れるんじゃないの?」には数多くのご賛同をツイッターでいただきました。そういえば琢磨クンも「一粒300メートルじゃなくて一粒500マイル」とか言っていましたね。是非、グリコさんには商品化していただきたいものです(笑)。
そして来シーズンのカレンダーが紹介され、かおりさんが「来年はどのレースで優勝しますか?」と訊ねられると、琢磨クンは「そうだなあ、開幕戦のセントピーターズバーグかなあ」と答えてくれたのであります! これはもう、開幕戦から大注目ですぞ!(笑) そしてそのままの勢いでシーズンを戦い、3回目のインディ500優勝とタイトル獲得を目指して欲しいものです!!
質問コーナーでは「年齢を重ねても活躍できる理由は?」「アメリカで生活していて感染症が恐くありませんでしたか?」「ホンダF1の撤退を受けて、SRS-Fなどに参加している若いドライバーにアドバイスは?」「レースで20番手くらいにいてもすぐ上位まで挽回できるのはなぜですか?」「来年の東京オリンピックで聖火ランナーを務めるって本当ですか?」「ストイックな琢磨さんでもジャンクフードを食べたくなることはありますか?」「インディカー・シリーズではダンパーが重要といわれますが、具体的にどういうことですか?」「シミュレーターによるシリーズ戦はもう行なわれないのですか?」「インディ500の表彰式では空しか見えなかったのでは?」なんていう質問が会場から飛び出したり、ツイッターを通じて届けられたりしました。そして今回も、琢磨クンはそのひとつひとつにていねいに答えたのです。
質問が終わったところで私は降壇。代わって、初の試みとしてカメラマンのマッチャンこと松本浩明さんがステージ上に登場し、琢磨クンやかおりさんとトークショーを繰り広げました。ここではマッチャンが撮影した写真を紹介するという話でしたが、実際に紹介されたのはレイホールのチームメンバーや百井浩平さんのビデオメッセージなど。最後には、世界的に活躍するあの日本人スポーツマンまで登場!
これはすべてマッチャンが仕込んでくれたそうですが、すごなあ、マッチャン。顔が広い!
さらに毎年製作されている琢磨クン・カレンダーも紹介されましたが、今年はコロナ禍の影響でマッチャンがカレンダーにサインしてお客様に手渡しすることができません。そこでツイッター上では「オンライン販売分はすべてマッチャンのサイン入りにして下さい!」なんてリクエストが飛び出していましたが、どうする、マッチャン?
続いては毎年恒例の抽選会。今年は会場の皆さんとリモート配信をご覧になっている皆さんのそれぞれを対象にしてプレゼントを設定。ちなみに会場向けの賞品はキャップやTシャツ、レーシンググローブ、ヘルメットバイザーなどを中心に16点ほど、リモート配信向けとしてはやはりキャップやTシャツを中心にして24点ほどが、いずれも琢磨クンのサイン入りでプレゼントされました。当選されたみなさん、おめでとうございました。
そしてイベントはここで一旦終了。ここから2017年インディ500での優勝シーン、2012年インディ500でのクラッシュシーンなどが流れたあとでステージ上が一瞬暗転すると、いつの間にかレーシングスーツに着替えた琢磨クンがコクピットから登場!グリコ・ポーズを決めたりミルクを頭からかぶるシーンを再現してくれたのです。いかがでしたか?琢磨クンがインディ500で優勝したときの感動がよみがえってきたでしょうか?
実はこのエンディングをどう演出するかについて最終的に決まったのは、イベント当日のリハーサルでのこと。それも、いざステージにマシーンを置いてから琢磨クンが「いや、マシーンは縦向きじゃなくて横向きにしたほうがお客さんからよく見える」と言い出したものだから、さあ大変。マシーンを横向きにした状態で優勝シーンをどう再現するか? テレビカメラはどこで待機していて、どのタイミングで琢磨クンに寄るのか? さらにはスクリーンに投影するビデオからステージを暗転させるタイミングまで、本当に開場ギリギリまで何度も繰り返しリハーサルして本番を迎えたのでした。みなさん、いかがでしたか?
そしてイベント最後の琢磨クンの挨拶。「本当にたくさんのサポートをありがとうございました。チーム、ファンのみなさん、スポンサーのみなさんに支えられて、ここまでやってこられました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。そして2021年もまたチャンスをいただきましたので、これまで以上に頑張るしかありません! 来年は是非、コロナ禍が収まって、皆さんがサーキットに足を運んでくださることを願っています」
ジーン……。いかにも琢磨クンらしい言葉ですね。そして、気のせいか、このとき琢磨クンの瞳が少し潤んでいるようにも思えました。
これでTCM2020はすべて終了。ご来場いただいたお客様には例年どおりサイン入りのカードがプレゼントされましたが、今年は感染症防止のため握手会もなし。そういう意味ではちょっと淋しかったかもしれませんが、それ以上に、琢磨クンから勇気と感動をもらったような気がしました。
そして琢磨クンも言っていたとおり、来年こそはみなさんがサーキットに足を運べるようになるといいですねえ。私も、久しぶりにインディカー・シリーズを取材してみようかな?(笑)
というわけで、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。また来シーズン、皆さまと笑顔で目にかかりたいと思います。今後とも琢磨クンをどうぞよろしくお願い申し上げます!!!