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毎年、TCMが開催される東京代々木の山野ホール。今年は本当にもう、これ以上入れないってくらいたくさんのファンが会場に詰めかけ、熱気ムンムンの状態で開演のときを迎えました。あの熱気、たぶん代々木駅くらいまで届いていたんじゃないかな(笑)。そしてエントランスでは、ノルドグレイカラーのNSXが来場者をお出迎えしてくれました。
最初は恒例のオープニングムービー。でも、今年は例年以上に格好いい仕上がりでしたね。それもこれも、ムービー担当者が頑張ったおかげか、それともインディ500優勝という偉業を成し遂げた佐藤琢磨君の力か。
ともあれ、いつもだったらムービーが終わったところで川崎かおりさんが登場してオープニングコールとなるわけですが、今年はいきなりステージ上手側にあるホール入り口のドアが勢いよく開き、そこから琢磨君が登場したのだから客席のボルテージはいきなり最高潮に到達。琢磨君はそのまま客席を半周し、ファンの皆さんとハイタッチしていったわけですが、いやあ、これまでにない最高のオープニングになりましたね。
12月10日に開催された“TCM2017 101st Indy500 Champion”、皆さんは会場にお越しいただきましたでしょうか? それともやむを得ない事情で参加できなかった? うーん、その辺は皆さんそれぞれでしょうが、20年に迫るTCMの歴史のなかでも本当に1、2を争いほどすごい盛り上がりのイベントになりましたので、今日はその模様をじっくりとご報告しましょうね。私は毎年、TCMのリポートを担当させていただいています大谷達也です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、琢磨君が会場を練り歩いている間にかおりさんがステージに登場。そして客席でのご挨拶を終えた琢磨君がステージに上ったところで、いよいよイベントが幕を開けます。
「第101回 インディ500チャンピオン、佐藤琢磨選手です! 琢磨さん、皆さんにご挨拶をお願いします!」とかおりさんが投げかけると、琢磨君は満面に笑みをながら「皆さん、やりました! どうもありがとうございました」と報告。すると会場からはウォー!という歓声と割れんばかりの拍手が沸き起こります。 「ホンダさんが開催して下さった6月の凱旋記者会見以来、本当にイベント続きで皆さんとは何度もお目に掛かっていますが、やっぱりこうやってTCMに帰ってこられるのは嬉しい! 本当に皆さん、ありがとうございました」 琢磨君はそういって深々とお辞儀したのです。
こういうときの琢磨君の喜び方というか感謝の示し方が、インディ500で勝って以来、ちょっと変化したような気がするのは私だけでしょうか? 人って、本当に大きなことを達成するとひとまわりもふたまわりも成長するということを、最近の琢磨君を見ていると改めて考えさせられます。
そんな私の思いをまるで見透かしていたかのように、かおりさんがこんな質問を投げかけました。「インディ500で優勝して、人生が変わったんじゃないでしょうか?」 ここで琢磨君はやや神妙な表情になって、次のように答えたのです。「レースの頂点を目指すようになって20年間、僕も40歳になりましたが、これまで追い続けてきた夢のひとつがようやくかないました。それは、ずーっとサポートして下さった皆さんのおかげです。本当にありがとうございます」 やっぱり、そうなんですね。偉業を成し遂げた今、これまで自分が歩んできた道を振り返ると、そこには様々な形で自分を支えてくれたたくさんの人たちの存在があった。いま、琢磨君はそんなことをシミジミと噛み締めているのでしょうね。
ここで改めてステージ上を眺めてみると、そこにはインディ500で優勝したときのカラーリングをまとったインディマシーンのショーカーと、銀色に輝く巨大なトロフィーが置かれているではありませんか! このトロフィーこそ、1936年以来、インディ500ウィナーの肖像を刻み続けてきたボルグワーナートロフィーなのです。インディ500の決勝翌日、コース上で優勝者とともに記念撮影するのが恒例になっているのでご覧になったことのある方もいらっしゃるでしょうが、なんとアメリカ国外に持ち出されるのは今回が史上初。それも太平洋をはるばる渡ってTCMにやってきてくれたのだから、嬉しいじゃありませんか!
さて、ここまで紹介が終わったところで私が呼び込まれてステージ上に登場。琢磨君に花束をプレゼントするなんていうキザなことをしてしまいました。あれ、本当に打ち合わせもなにもなく、当日の朝にふと思いついたことなんですよ。「インディ500初優勝直後の大切なTCM。その特別感を演出するために、なにか私にできることはないか?」 そんな風に考えていたらひらめいたもので、直前のリハーサルが終わってから駅前の花屋さんに飛び込んで用意してもらったものだったのです。
ともあれ、私の赤面したくなるシーンなどを織り交ぜながら、続いて琢磨君の2017年シーズンをビデオで振り返るコーナーが始まりました。実は1時間ほどにまとめられたビデオのうち、およそ20分間がインディ500にまつわるシーン。ここで琢磨君はマシーンのセッティングやライバルとのバトルの様子を細かく解説。ビデオを使っているから、そのとき琢磨君はなにを考え、ライバルはどういう動きを見せたのかが一目瞭然。とりわけフィニッシュ間際の、まるで詰め将棋のような緻密さで計算され尽くされた戦い振りには改めて驚かされました。
そしてビデオが終わったところで、最後まで栄冠を競い合ったエリオ・カストロネヴェスのオンボード映像でラスト9周を振り返ってみました。ちなみに、この映像が連続して公開されるのは、どうやら今回が初めてだったようです。エンジン・ノイズなどを除けばテレビ音声が一切載っていない動画は息も詰まるようで迫力満点。ここで、またしても琢磨君の詳細解説が入るのですからたまりません。これに続いて、サプライズでカストロネヴェスのビデオレターが登場。「来年、琢磨とバトルできることを楽しみにしている。そして最後はベストなドライバーが栄冠を勝ち取る!」と、かるーく勝利宣言をしていましたね。琢磨君も負けないように頑張って下さい。
さらに内閣総理大臣顕彰が授与されたときの動画、トランプ大統領との晩餐会の様子、12月3日にツインリンクもてぎで行なわれたHonda Racing Thanks Dayのビデオなどが次々と紹介され、そのときどきの琢磨君の印象が語られました。
前半、スペシャルトークの締め括りは来季に向けての話。レイホール移籍への裏話、そしてインディ500連覇とシリーズ・タイトル獲得を目指す琢磨君の意気込みなどをじっくりと聞いたファンの皆さんは、早くも来季に向けての期待を膨らませているようでした。
私の出番はここまで。続いて恒例の質問コーナーが始まりました。最初は4歳のかわいいお嬢様が、インディ500優勝後に琢磨君がミルクを飲んでそのまま頭からかぶったシーンを可愛く物まね。これを見た琢磨君が「ミルクをかぶるのはお風呂場にしましょうね」というと、かおりさんが「いえいえ、お風呂場でもしません」と鋭く切り替えしたのが印象的でしたね。
次もお子様からの質問で、「レースに出るにはいくらかかりますか?」という直球勝負。これに琢磨君は「○から○円くらい」とストレートに返球。「ただし、いつでも自分のベストを尽くしていれば周りの人たちが支援してくれるので、お金の心配をしなくても大丈夫」と、いまの琢磨君らしいアドバイスも授けてくれました。
続いて質問に立った林さんは「インディ500後のビクトリーバンケットの裏話を聞かせて下さい」とリクエスト。琢磨君が予定時間を超えて延々とスピーチしたエピソードを披露すると、林さんが「実は国交省の石井大臣は私の友人。インディ500で琢磨さんが優勝したとき『なにか賞を贈って欲しい』と頼んだら内閣総理大臣顕彰に決まった」と暴露。実は林さんが影の功労者であったことが明らかになりました。
質問が続きます。「レースを戦っているとときにはうまくいかないこともあるはず。そんなときにネガティブな言葉を投げかけられたら、琢磨さんはどうやってそれに打ち勝とうとしますか?」 そう訊ねられた琢磨君は「まずは自分を信じる気持ちが大切」と語り、さらに「ネガティブな言葉はなるべく聞かないように、見ないようにしている。ただし、自分がなぜ失敗したのかはじっくり検証して、その原因がわかれば全力で解決する」とコメント。これとは別に「自分の限界に挑戦するから価値があるし、前進もできる。だから、失敗するのは当然のこと。むしろ失敗こそチャンスで、そうやって努力すれば必ず夢はかなうはず」とも語り、レーシングドライバーとしての20年間の歩みと、インディ500での優勝という成功体験を重ね合わせて語ってくれました。
最後は、TAKUMA KIDS KART CHALLENGEでアカデミー生に選ばれた男の子からの質問。「レーシングドライバーとして、レース以外になにか大切にしていることはありますか?」 この問いかけには、オトナの方々もどきっとさせたれたのではないでしょうか? ただし、ここでも琢磨君の答えは一本筋が通っていて「やっぱり感謝の気持ちだと思います」と回答。支援してくれる人たちへの感謝の気持ちが自分の次の活動につながり、同じく感謝の気持ちが次の世代をサポートしようとする気持ちを生み出すという、これまた深いアドバイスを琢磨君はしてくれました。質問して下さったみなさん、ありがとうございました!
質問コーナーに続いてはプレゼントコーナー。琢磨君がレースシーズン中に使った思い出の品を気前よくプレゼントしちゃうこの企画は毎年大人気ですが、今年は特に賞品が豪華でしたね。その一部を紹介すると、キャップ関連ではTAGホイヤー、インディ500でメインスポンサーを務めたRUOFF、ボルグワーナー、デトロイトでのポールポジション獲得記念などなど。そのほかにもドライバーTシャツやヘルメットバイザーに始まり、とどめはレースで実際に使ったレーシンググローブやレーシングシューズまで大放出。合計21名の皆さんに賞品が贈られました。
ただし、抽選会はあくまでも偶然がもたらすもの。レーシングドライバー佐藤琢磨としては勝負で賞品を勝ち取って欲しいという思いから始まったのが、こちらも恒例のジャンケン大会。今回はレーシングシューズとドライバーシャツのほか、お子様限定でボルグワーナー・イラストが15名の“勝者”に贈られました。みなさん、おめでとうございます!
ここで琢磨君と観客のみなさん全員がワンフレームに収まる記念撮影を行ったところでイベントは中締めとなります。
続いては皆さんお楽しみの握手会。参加者のひとりひとりが琢磨君とじかにふれあうこの機会を楽しみにTCMに参加してくださる方も少なくないようです。そして皆さんには琢磨君の直筆サイン入り特製カードがいつものようにプレゼントされました。
そして握手会の裏番組としてステージ上で繰り広げられるのが、こちらも毎年恒例のミニトークショー。今年も豪華なメンバーが出演してくれましたね。最初に登場してくれたのはデザイナーの福田典嗣さん。琢磨ファンの皆さんが目にしているたくさんのものが、実は福田さんによってデザインされています。ちなみに、握手会のときにプレゼントされる格好いいカードも福田さんの作品なんですよ。
続いて登場したのは、ファンの皆さんにはすでにお馴染みの百井浩平トレーナー。今回はゲストの方に手伝ってもらいながら、琢磨君がいつもやっているバーディやスパイダーといったトレーニングを実演。「乗せ上手」な百井トレーナーの一面が垣間見えました。
そして今年も忘れることのできない観戦ツアーのお知らせをして下さったのは東武トップツアーズの生巣さん。2018年はあのインディ500観戦ツアーを企画。さて、このツアーに参加すれば琢磨君が“連覇”するシーンに立ち会えるでしょうか?
うーん、とても楽しみですね。
ミニトークショーのトリを務めてくれたのは、こちらも皆さんお馴染みの松本浩明カメラマン。「今日はいい話を披露しましょうか?」といつになく真面目な調子の松本カメラマン。「インディ500直後の表彰式で、僕の近くにアメリカ人のベテランカメラマンがいたんですが、彼はこのインディ500を最後にレースカメラマンから引退するというのです。そのレースで琢磨君が優勝すると『私の最後のレースでタクマが勝って、本当によかった』といってくれたんです」
おお、琢磨君の優勝は私たち日本人だけでなく、アメリカの人たちにも喜んでもらえたんですね。これは本当に嬉しいお話でした。
そしてここで、会場の周りの展示コーナーについても紹介させて頂きますね。今年は貴重なアイテムがたくさん展示され、みなさん写真撮影に大忙しでした。
ブリヂストン様の協力で、実際にINDY500で使用したタイヤを展示
東京モーターショーで書いた本人の直筆サイン
毎年開催しているWYJの2017年度の活動を写真で紹介
INDY500のレース写真を展示
INDY500で実際に使用したヘルメット、レーシングスーツ、シューズなどのアイテムとボルグワーナー様の協力で日本に届いたリーフを展示
INDY500のヴィクトリーレーンで実際に飲み干したときの牛乳瓶とそのとき被っていたファイアストンキャップ、そしてチャンピオンズリングを展示
INDY500優勝の功績によって受賞した数々の盾や賞状。そして今年2回獲ったポールポジションのクリスタルトロフィーを展示。
ボルグワーナー様とホンダ様の協力で展示したボルグワーナートロフィーはステージ上に展示。みんな撮影に夢中でした。
第16戦ワトキンスグレンのレースで実際に使用したLUXURYCARDモデルのヘルメット。
今回、じゃんけん大会の賞品ともなったラグジュアリーカードも展示。いつも以上にじゃんけん大会が盛り上がりました。
今年、初の試みとしてイラスト化した商品をTCM会場で先行販売致しました。
会場内はその他たくさんのグッズが販売されました。
2時間を越える握手会が終わったところで、ステージ中央に再びかおりさんが登場。「もう一度、あのシーンを振り返ってみましょう」という言葉とともに、第101回インディ500最後の11ラップが映像で紹介されました。こちらはアメリカ人解説者と、琢磨君のスポッターを務めたロジャー安川さんとデイモン・ヒルさん(ワールドチャンピオンのデイモンとは別人です!)の声だけが入っている特別バージョン。ロジャーさんがどれだけ琢磨君を勇気づけ、そして的確に優勝へと導いてくれていったかがよくわかるビデオでしたね。
そしてビクトリーサークルでの感動のシーン。すると、驚いたことに、映像とタイミングをあわせてステージ上のマシーンからホンモノの琢磨君が登場。しかも、立ち上がった琢磨君に月桂冠をプレゼントしたのは、スポッターのロジャーさんその人だったのです! 実はロジャーさんはこの日の午後にアメリカから帰国したばかりで、成田空港から直接会場に駆けつけてくれたとのこと。これも琢磨君には内緒のサプライズ企画でした。
感動した琢磨君は、牛乳を飲み干すシーンでホンモノの表彰式のときと同じようにミルクを頭からかぶってくれました! もう、このときには会場は大興奮のるつぼ。それとともに、感動のあまり涙ぐむ方の姿も見られました。ここに百井トレーナーとかおりさんも登場して感動のエンディング。最後に琢磨君が「信じ続ければ夢はかなう」と挨拶したときには、琢磨君の瞳もうっすら涙が浮かんでいるように見えました。そして会場からの拍手が鳴り止まないなか、出演者が順に降壇してイベントは終了しました。
開演から終演まで5時間を越す超ロングイベント、TCM2017はこうして幕を閉じました。その感動的な様子は、こうやって文章で表現しようとしてもなかなかうまくいくものではありません(私の筆ででは、なおさら伝わらない!)。そこで、皆さんには朗報があります。なんと、当日の模様がGAORAでオンエアされるのです。初回オンエアは年明け1月8日の13:00から1時間30分枠という超豪華版。その後も何度か再放送されますので、どうかお楽しみに!
というわけで、私のTCMレポートはこれにておしまい。来年はどんなシーズン、どんなイベントになるでしょうか? いまから楽しみですね。ありがとうございました!!